2019年7月8日(月)から14日(日)までの北朝鮮の動向 最高司令官か、総司令官か

2019年7月8日(月)から14日(日)までの北朝鮮の労動党機関紙『労動新聞』、国営テレビ『朝鮮中央テレビ』などを通して分析した今週の北朝鮮の動向です。

 

今週、注目されるのは、4月11日の最高人民会議第14期1次会議で改正された社会主義

憲法が公開されたことす。北朝鮮の対外宣伝用ネットニュース『わが国』で公開されました。

金正恩時代に入ってからこの 7年の間に北朝鮮では憲法が4回改定されましたが、これほど憲法を改正する国はないでしょう。

今回も北朝鮮は4月11日の最高人民会議で憲法が改正されたとだけ報じ、憲法の何が変わったのかは北朝鮮住民に公開していません。

ただ、最高人民会議が終わってから2日後の4月14日付け『労動新聞』は金正恩を「朝鮮人民の最高代表者」と初めて報道し、私も含めた一部北朝鮮専門家が国務委員長職を国家を代表する肩書きに修正したのではないか、もし修正したなら金正恩が今後、北朝鮮の「‘国家首班」になるのではないかとだけ推測しました。

今回、新しく改正された北朝鮮憲法第 100条に「朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長は国家を代表する朝鮮民主主義人民共和国の最高領導である」となっています。これは、つまり、金正恩が北朝鮮の国家首班ということを明文化したのです。
そして、「第102条朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長は朝鮮民主主義人民共和国武力総司令官で国家の一切の武力を指揮統率する」となっていて、「朝鮮人民軍最高司令官」と呼んでいた職責が「総司令官」に変わりました。

実は「総司令官」という表現は中国式「総司令」という表現と似ているので北朝鮮が使わなかった表現でした。

そして、第103条には「他国と結んだ重要条約を批准または破棄する」となっていることも新しいことです。

ところで、最高人民会議常任委員会委員長の職責を明文化した第115条を見ると、「他国と結んだ条約を批准または破棄する。(中略)他国に駐在する外交代表の任命または召還を決定し発表する」とし、第116条には、「最高人民会議常任委員会委員長は国家を代表して他国使臣の信任状, 召喚状を受けつける」とされています。
つまり、北朝鮮では国家代表者は 2人いて、条約を批准・破棄する人も 2人いることになります。金正恩が国家首班として, そして最高指導者として「重要な条約を批准または破棄」して、崔竜海常任委員長は国家首班ではないが国家を代表して他の国々に派遣する北朝鮮大使たちに信任状を与え、他国の大使たちの信任状を受けつけて、その他の重要ではない条約を批准または破棄する対外事業を行うというものです。簡単にいえば、韓国、中国、ロシア、アメリカ、日本などの重要国との外交や終戦宣言、平和協定のような北朝鮮の根本的な利益が左右される条約、協定は金正恩が直接行うということです。
憲法に国家代表者をこのように2人に設定して、条約の批准・破棄もその重要度によって担当が変わる国は北朝鮮しかないでしょう。

憲法に明記された金正恩の職責もはっきりと北朝鮮住民に公開しないため、北朝鮮内部でも金正恩の職責が最高司令官なのか総司令官なのかよく分からず混乱が生じています。
7月14日付『労動新聞』に6月29日にヘルシンキで行われた「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のためのヨーロッパ地域連帯性会合」が金正恩宛てに送られた手紙が報道されましたが、そこに金正恩の職責を「朝鮮労動党委員長、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長、朝鮮民主主義人民共和国武力最高司令官」と表記されていました。
会議が行われた日は6月29日で、これは憲法が改正された4月11日後ですが、改正された憲法の内容を北朝鮮大使館があらかじめ知らせなかったために以前の肩書きの「最高司令官」という表現をそのまま使ったようです。
私が英国で北朝鮮公使を務めていた時、金正恩の肩書きを「‘朝鮮労動党中央委員会委員長」で送ればいいのか尋ねられて、「中央委員会」を削除してほしいと伝えて修正して送ったことがありました。
北朝鮮で最高尊厳である金正恩の肩書きが異なって明記されたと報道されれば一大事です。

いつだったか、労動新聞社で「‘朝鮮労動党総書記」である金正日の肩書きを「朝鮮労動党中央委員会総書記」と報道して、その日の新聞発刊を担当した幹部と記者が首領の肩書きも知らない不敬罪に問われて解任された事件がありました。
今回、7月14日付けの『労動新聞』が金正恩の肩書きを憲法とは違う最高司令官で報道したため、また人が入れ替わるのではないかと心配になります。
北朝鮮も他国のように憲法を北朝鮮住民にも分かるように労動新聞を通して公開することが、このような混乱を起こさないことになるのではないかと考えます。

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