2019年7月15日(月)から23日(火)までの北朝鮮の動向 北朝鮮の地方人民会議代議員選挙の実体は?

2019年7月15日(月)から23日(日)までの北朝鮮の労動党機関紙『労動新聞』、国営テレビ『朝鮮中央テレビ』などを通して分析した今週の北朝鮮の動向です。

 

7月23日付けの『労動新聞』は、21日に行われた道、市、郡の人民会議代議員選挙に選挙者(有権者)の99.98%が参加して100% 賛成投票したと伝えました。

北朝鮮の憲法を見ると北朝鮮の選挙制度が自由民主主義国家と特に違いがないようにみえます。

北朝鮮が4月11日に改正した 社会主義憲法」第4条には、「朝鮮民主主義人民共和国の主権は労動者、農民、軍人、知識人を含めた勤労人民にある。勤労人民は自分の代表機関である最高人民会議と地方各人民会議を通じて主権を行使する」とあり、第6条には 「軍人民会議から最高人民会議に至るまで各主権機関は一般的、平等的、直接的な原則によって秘密投票で選挙する」、第66条には、「17歳以上のすべての公民は性別、民族別、職業、 居住期間、財産及び知識位、党別、政見、信仰にかかわらず選挙をする権利と選挙を受ける権利を持つ」と明記しています。

一見、憲法上、北朝鮮の主権が北朝鮮住民にあるようにみえますが、北朝鮮住民にとって選挙というのは自分の政治的権利を行使する過程ではなく、ひたすら首領と党がすでに任命する代議員に賛成票を投票するという単純行為に過ぎません。

その理由は第一に、北朝鮮ではすべての住民がすべての選挙に参加するのではなく、北朝鮮体制に対して批判的な立場をとったり、またはそういう立場をとる者の家族は政治犯収容所に閉じこめられて選挙に参加することができません。つまり、反体制人物には選挙権がないのです。

そして、北朝鮮で選挙結果は選挙前にすでに確定しているという事実です。

北朝鮮で最高人民会議にしろ道、市、郡の地方人民会議にしろ人民会議ごとにあらかじめ幹部、労動者、農民、知識人、軍人、女性など階層別、職業別、性別の代議員の割合を党で決めます。

その後、人民会議ごとにその割合に合うように該当の党組織で選挙区別の単一立候補を決めて中央党に報告し、中央党幹部部では最終立候補名簿を金正恩に報告して批准を受けます。こんな手続きを踏むので、北朝鮮では上がすでに決めた単一候補ばかりが立候補でき、単一立候補選挙制度でしかないのです。選挙権は国民にあるのではなく、金正恩と労動党にあるわけです。

さらに、 選挙の投票過程を見ても住民が自分の意思を秘密にすることなどはできず、全過程は徹底的に見張られています。

選挙の手続きは、まず、すべての有権者が投票所に集まって一列で自分の選挙表の順序によって入って、投票します。村の選挙表番号は家族単位の順序になっていて、並ぶ順序も他人と変えて立ったりはできません。

有権者が投票場の入口から入ると、選挙委員が市民証を通して選挙者名簿を対照確認した後、有権者に番号付きの選挙表を与えます。そして、有権者はそれをもらって投票箱に入れます。

有権者が投票場に入る前に必ず肝に銘じなければならない事項は投票場の入口にある選挙名簿で自分の選挙番号を確認して投票の際、自分の選挙表を賛成箱に入れたかどうか確認することです。もし他人と選挙表が変わっていて、その人がその選挙表を裂いて密かに選挙箱に入れたりしたら大変なことになります。

反対する場合はペンで「×」と記せとありますが、それを信じて自分の選挙番号が書いてある選挙表に反対の表示をすれば、「私を捕えて連行してください」と言っているようなもので本人が自分を情報提供する行為と同じことになります。

選挙に参加しないことも北朝鮮社会に対する反対する意思表示と見なされるので前もって不可避な事情で許しを得ない限り、不参加は許されません。

ですから、北朝鮮選挙では賛成率が100%になるしかないないのです。

最後に、北朝鮮は選挙ごとに党組職と宣伝煽動手段を動員して住民に無条件に賛成投票することを強要しています。

今回も選挙が行われる当日の21日、『労動新聞』1面には「すべての地方人民会議代議員選挙に参加して賛成の一票を捧げよう」という社説を掲載しました。

金正恩の命令ともいえる労動党機関紙が住民に賛成投票しろと公けで要求していることは、「一般的、平等的、直接的原則によって秘密投票する」と規定されている北朝鮮憲法にも違反します。

北朝鮮の選挙制度は憲法で明記した一般的、平等的、直接的、秘密投票の原則とも異なる前代未聞の反民主的、反文明的な投票方式です。

北朝鮮では住民に選挙に対する一般的な概念をも持つことができないよう小学校の時から屈託のない子供の班長を選ぶことも教師が直接選び、少年団、青年同盟、朝鮮職業連同盟、労動党など各組職の末端単位の細胞組織の責任者を選ぶ選挙でも組職構成員に責任者を選ぶ権利を与えずに会議であらかじめ決められた人が「執行部案」を発表してくれといえば会議の司会者が、「◯◯同志」を勧めると答えるといったやり方で上の党であらかじめ責任者を直接任命する方式をとっています。

北朝鮮が正常な国家へ向かう道はさまざまありますが、もっとも重要な問題は憲法に明かにされているとおり国を運営することであり、そうしようとするならば憲法に明記したように住民に「一般的、平等的、直接的な原則によって秘密投票できる」環境を作ることから始めなければならないでしょう。

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