2019年1月27日(日)から2月3日(日)までの北朝鮮の動向 金正恩、中国取り込みに集中

2019年1月27日(日)から2月3日までの北朝鮮の労動党機関紙『労動新聞』、『朝鮮中央テレビ』、 対南メディアのウェブサイト『わが民族同士』(ウリミンジョクキリ)、対外用の宣伝媒体『朝鮮中央通信』など、北朝鮮の主要メディアを通して見た今週の北朝鮮の動向です。

 注目される動きは次のとおりです。

1.前方には米国、後方には中国

まず、金正恩が第2回米朝鮮首脳会談を控えて、「中国を取り込むこと」と「北朝鮮内部の結束」にすべてを集中している点が目を引きます。

年明けの1月、金正恩の活動がメディアに報道されたのは1月7日から10日までの中国訪問、1月23日の訪米から帰国した金英哲一行との接見(北朝鮮の住民向けメディアには報道されず、対外宣伝用の朝鮮中央通信のみで報道)、そして、1月31日の訪中から帰国した北朝鮮の「親善芸術団」のメンバーとの記念撮影など、すべて中国、米国に関連する活動だけでした。

ところが、2月1日から北朝鮮の朝鮮中央テレビが「2019年、初の親善芸術使節たち」というタイトルで放映された記録映画によると、金正恩は、「公演準備の現場を何回も訪ねて種目編成や形象、出演者の選抜や紹介、舞台の流れの詳細に至るまでくまなく見てくださり、種目ひとつひとつに魂を込めて整えて最上の水準で完成してくださった」と言っています。

これは金正恩が1月下旬のほとんどの時間を芸術団公演の準備に割いたことを意味します。

特筆すべきは、金正恩が芸術団の公演準備の最終試演会の際に、平壌駐在の中国大使を招いて公演を一緒に見ながら内容について議論したという点です。

北朝鮮の歴史の中で、外国を訪問する芸術団の公演準備に最高指導者が何度も現場に足を運び、指導したことを公開することも初めてですが、最終試演会に外国の大使まで呼んでその内容について話し合ったということは金正恩が中国側に自分が今回の芸術団の訪中をどれだけ重視しているかを意図的に見せようとしたことが伺われます。

金正恩が今回の芸術団の中国訪問に入念なのは、第2回米朝首脳会談で自身の要求条件をどの程度まで押せるかについて事前に計画を練るためには中国からの経済面での後押しがたいへん重要だからであり、また、続く対北制裁に心理的に不安になっている北朝鮮の民心を引き締めようと中朝関係はさらに強化されているということを住民に常に見せなければならないためです。

2.銀河水管弦楽団メンバーの復帰

次に北朝鮮の芸術団の中国訪問を通じて、2013年に処罰の嵐が吹き荒れた「銀河水管弦楽団」の一部メンバーが舞台に復帰していることを示唆している点です。

今回、中国を訪問した芸術団の歌手たちの中に、2013年8月に粛清され、解体された「銀河水管弦楽団」のエース級の歌手だったファン・ウンミとソ・ウンヒャンが含まれていて、北朝鮮メディアは彼らの公演シーンに意図的に焦点を合わせていました。

「銀河水管弦楽団」は2009年、金正恩の登場に合わせて沈滞していた北朝鮮社会に活力を吹き込むために組職された芸術団体で、金正恩夫人、李雪柱はもちろんのこと平昌冬季オリンピックで有名になった玄松月もこの楽団の出身です。

当時の「銀河水管弦楽団」には北朝鮮で最高歌手といわれたイタリア留学出身のソ・ウンヒャン、ファン・ウンミ、そしてロシア、チェコスロバキアなどに留学経験のある若手が大挙、入団していました。

ところが、2013年8月に「銀河水管弦楽団」が粛清されて、留学派の中では楽団団長だったムン・ギョンジンなどは粛清されました。しかし一方で、ソ・ウンヒャンとファン・ウンミは処罰を兔れて芸術団や音大の教員などになり、ただし舞台での公演はこれまで制裁を受けて来ました。

2018年4月、平壌で開かれた南北芸術団の合同公演の時にも、北朝鮮で最高とされる代表歌手が総出演したが、北朝鮮の歌手を代表するファン・ウンミとソ・ウンヒャンの姿はなく、多くの人々が残念がっていたといいます。

今回、中国を訪問した北朝鮮の芸術団に「銀河水管弦楽団」のアイコンである彼らが公式に含まれたという事実を北朝鮮メディアが意図的に見せようとしたことから考えると、同楽団の他の俳優も音大や 2部の下の芸術団から1部の芸術団へ復帰した可能性が大きいでしょう。

3.幹部の地位に変化が

今回の北朝鮮の芸術団の訪中を機に北朝鮮幹部たちの地位に変化が生じています。

芸術団の中国訪問期間中、3階書記室で金正恩の側近であり芸術担当策士で働いて来たチャン・リョンシクと「三池淵楽団」団長である玄松月が「党副部長」と呼ばれましたが、これは彼らの地位がぐんと上がったことを反映しています。

芸術団に李ヤンシクという新しい人物が党第 1副部長の資格で同行し、金正恩の公演指導の際にも同席していましたが、もし彼が党宣伝扇動部第1副部長ならば金与正が党宣伝扇動部行事担当第1副部長から 3階書記室の金正恩儀典担当副部長に昇格したかもしれません。

今後は、金与正が国務委員会部長や局長として呼ばれる可能性もあるということです。

以上、今週の北朝鮮の動向でした。

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