今回の金正恩の新年の辞をひと言でいうと、
▼対内的には、
「核兵器固守による対北制裁に備えた長期戦を予告しながら自力更正で現難局を突破」し、
▼対外的には、
「核保有国としての地位をさらに固める方向で異なる交渉戦術で周辺国を撃破して共助体制を崩す」、とまとめられるだろう。
総括すると、昨年2018年の新年の辞と比べると政策順位と論理が明白で金正恩集権が 8年めに入り、統治方法も一段階進化していることを示唆した文書だった。
このように判断できる根拠として、
▼昨年、新年の辞にあった「核のボタン」、「核弾頭や弾道ロケット大量生産実戦配置」などのような強硬な表現が消えたこと、が挙げられる。
私が驚いたのは、新年の辞の軍需工業成果部門において、「経済建設にすべての力を集中するというわが党の戦闘的訴えを受け止めて、さまざまな農業機械や建設機械、 協同品や人民の消費品を生産し、経済発展と人民の生活向上を促した」という部分と、課業部門でも、「軍需工業部門では朝鮮半島の平和を武力で揺るぎなく担保できるよう国防工業の主体化、現代化に迫り、国の防衛力を世界の先進国家水準に続けて向上させ、経済建設を積極的に支援しなければならない」と言及した部分だ。
北朝鮮の新年の辞の歴史で軍需工業部門と民需分野をこのように連結させたことは前例がなく、軍需工業が本業ではない民需分野に集中することを示唆したのも初めてのことだ。
これは北朝鮮が 2018年4月 20日の党全員会を契機に核完成を宣布した後、軍需工業分野の多くの予算を民需分野に回していることを公開し、宣言したと同時に、核があるからこそ在来式の武力の現代化は少しおおざっぱにやってもよいという自信感の表出と判断できる。
▼対米・対南政策もよかなり具体的になっていて、対南分野に入っていた内容が対米に入っていたり、対米に入る内容が対南部門に入るなど戦術的な問題も新しく独特なものが多い。
今後、金正恩の新年の辞を分野別に深層分析していく予定で、便宜上、新年の辞の順序にはせず、対南、対米、国内動向などで行っていこうと思っている。
最後まで関心を持っていただければ幸いだ。