12月10日から12月16日までの北朝鮮の動向

2018年12月10日(月)から同16日(日)までの、北朝鮮の労働党機関紙『労働新聞』、対南メディアのウェブサイト『わが民族同士』(ウリミンジョクキリ)などの北朝鮮メディアを通して見た今週の北朝鮮の動向です。

注目される動向は3点あります。

  1. 北朝鮮メディアが初めて金正恩の答礼のための韓国訪問について「来るべき民族の特大な事変」と描写したことが挙げられます

韓国訪問の可能性を開いておき、南北関係を制裁緩和引き出しのテコとして活用か

『わが民族同士』は10日、「民族のリストから除名しなければならない」という記事を掲載し、「最近、南朝鮮の各階層で、敬愛する最高領導者同志を崇拝し、称賛する熱風が日増しに高まっている」としたうえで、「極右保守団体である太極旗部隊が北南間の和解と協力の雰囲気を破綻させようと発狂しており、同胞の怒りを買っている」と非難しました。

 記事は、まるでソウルで金正恩を歓迎する雰囲気が高まっているかのように書かれていますが、注目すべきは、記事の中で、韓国の保守勢力が「来るべき民族の特大な事変を妨害しようとしている」という表現が使われている点です。

「民族の事変」という表現は、北朝鮮では最高領導者の活動に関連してのみ使える表現です。

 現在、南北当局間で金正恩委員長の韓国訪問について水面下での交渉が進められているかどうかは推測の域をでませんが、北朝鮮が「来るべき民族の特大な事変」という表現をいったん使ったという事実は、北朝鮮は金正恩のソウル訪問の可能性を開いていることを示唆することで、それを韓国が米国から対北制裁の部分的緩和を引き出すよう要求するテコとし利用することにしたことを意味しています。

2. 第2回米朝首脳会談の前提条件として、金正恩の10月7日付けの提案を米国が受け入れるよう公式に要求している点です。

金正恩の10月7日付け提案は非核化の先行処置に?

 朝鮮中央通信は13日、ジョンヒョンという名の個人名による論評「時間は米国の愚かさを悟らせるだろう」で、第2回米朝首脳会談が開かれない責任は米国にあるとしました。

この記事を見ると、これまで米国と北朝鮮の間で数回、非公開の接触があったことが伺え、北朝鮮の非核化の処置における評価の問題を巡って相当な見解の違いがあったことが分かります。行間からは読み取ると、10月7日、金正恩がポンペオ米国務長官と平壌で会った際、非核化の追加処置として豊渓里(プンゲリ)の核実験場と東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場について米国専門家の訪問許可についての問題を持ち出し、これを「北朝鮮の非核化の追加処置」として受け入れ、第2次米朝首脳会談を開催することを提起し、ポンペオ米国務長官もその席で同意したのが、米国は11月の中間選挙の後に開催しようと立場を変えたということです。

 北朝鮮の主張は、北朝鮮が「査察の受け入れ」という驚異的な譲歩をし、ポンペオ米国務長官も「段階的に可能なものからひとつずつやろう」という北朝鮮のサラミ方式に同意したにもかかわらず、翻意したとしています。

10月7日の金正恩とポンペオ米国務長官の会談に関連したプレスリリースを見ると、ポンペオ米国務長官が金正恩に、「寧辺の核施設の申告と検証、さらに包括的核武器、物質、設備の申告が非核化の初期の先行措置」という米国の立場を明らかにできなかったように見えます。
 ポンペオ米国務長官本人も平壌を訪問した後、帰国した米国で、金正恩の提案について、「非核化で新たな進展」とオブラートするという試行錯誤をし、私たち専門家も北朝鮮の非核化において「一歩前進」と評価して制裁の部分解除のような「対応措置」をとるべきだとする意見を提起しました。
 ところが、この2カ月の間に、米国が金正恩の新しい提案を非核化の先行措置とは見なさないとして、この提案の受け入れを拒否し、韓国政府もこれを「非核化の進展」と評価すべきだと米国を説得することに失敗しました。
 韓国政府や米国もポンペオ米国務長官の10月7日の北朝鮮訪問前に、核申告だけが非核化の初期の先行措置とする認識を共有すべきでしたが、何をもって北朝鮮の非核化の先行措置と見るかについて明白な概念がありませんでした。
 これらの曖昧模糊が結局、北朝鮮に誤った期待感を与えました。
 もし、韓国や米国の指導者が金正恩と直接会う際、金正恩との気まずさや葛藤を避けようと問題を正確に提起できなかったり、一部の概念を曖昧にして終わらせてしまう傾向があるとすれば、北朝鮮内部で実際の交渉をリードしていく実務レベル者は非常に困難な状況になります。
 韓国や米国の指導者たちも金正恩の前で憚るような問題を、北朝鮮の実務者から金正恩にそれは難しいと提案できないからです。
 今回、北朝鮮は論評で、核施設の申告は結局、自身を打撃する座標を撮ってくれということにほかならず、米国がそうした不当と無礼を悟り、自ら撤回したと主張していますが、これは、金正恩が核施設の申告をできないとした時にポンペオ米国務長官が明白な立場を示さずに曖昧にしたことを意味しています。
 第2回米朝首脳会談を通じて、北朝鮮の核交渉を再開しようとするならば、今からでも米国が核申告が最も重要な最初の非核化の先行措置だということを公式化すべきで、核申告を通じて真正性が見えれば制裁の部分的解除が可能であることを明らかにすべきでしょう。

3.現在、進行している米国や南北関係の状況を北朝鮮幹部や住民に知られることを徹底的に遮断している点が挙げられます。

最近の南北関係や米朝関係で重要な視点が入った記事が労働新聞には出ずに、北朝鮮の幹部や住民が見ることができない対外用の朝鮮中央通信や対南メディアのウェブサイト『わが民族同士』にだけ掲載されています。

以上、今週の北朝鮮の動向でした。

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